日本では2009年に2価、2011年に4価の子宮頸がん予防のためのHPVワクチンが承認され、2013年4月に予防接種法における定期接種に組み込まれました。しかし、同年3月頃からワクチン接種後に広範な疼痛やけいれんが生じた症例が相次いで報告され、新聞やテレビなどで連日報道され、同年6月に厚生労働省は副反応に関する十分な情報提供ができるまで、積極的勧奨を一時差し控えることを決定しました。以来7年間にわたり、再開されない状況が続いており、わが国のHPVワクチン接種率は決定以前の約70%から0.6%にまで落ち込んだままの状況が続いています。
HPVワクチンは、2013年4月以降予防接種法に基づく定期接種を外れたことは一度もなく、今でも対象年齢の女性は無料で接種できます。厚生労働省の接種の積極的勧奨の中止の健康局長の通達にも拘らず、定期接種であるという法の趣旨を踏まえるならば、自治体としては勧奨を実施する必要性が生じます。しかし、多くの自治体が接種者やその家族に案内を送ることを控えているため、無料の定期接種ワクチンであることを知らないまま打つ機会を逃している人が多くなっています。
厚生労働省は2018年にHPVワクチンのリーフレットを作成し、ワクチンの意義や効果、体調不良などについて接種後の情報提供をしています。しかし、7割を超える自治体においては、これらリーフレットを、Webに掲載したり、窓口に設置すらされておらず、情報はほとんど国民に知らされていない状況にあります。家族が自治体にHPVワクチンの問い合わせをすると、窓口でそんな危険なワクチンを打つのですかと問いつめられることもあります。またそのリーフレットには、「HPVワクチンは、積極的にお勧めすることは一時的にやめています」との記載もあります。現在、厚生労働省の専門部会もリーフレットの改訂を計画しています。HPVワクチンの正しい知識を国民に分かりやすく伝えていくことが、接種率向上への道です。
(吉村 やすのり)