トランプ米政権が、WHOからの脱退を国連に正式に通告しました。米国は、最大の資金拠出国であるだけでなく、WHOによる途上国の感染症対策でも、要員派遣や薬の提供で大きな役割を果たしてきました。こうした活動にブレーキがかかると、病気の発生地で対策が遅れ、地球規模の感染症の拡大を抑えにくくなる恐れが出てきます。
WHOは1948年に発足しています。米国と英国が設立を主導しました。米国は、戦略立案や感染症発生地への医療者派遣を積極的に担ってきました。WHOの活動資金は、米ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団など民間の拠出金が増えており、米政府の撤退ですぐに行き詰まるわけではありませんが、人的な支援や製薬企業との協力関係まで滞れば、途上国の感染症対策に支障が出かねない状況です。
(2020年7月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)