妊婦が感染すると、重症化しやすいかどうかはまだはっきりしていません。米国では、リスクが高い可能性があるとの報告もありますが、厚生労働省は現時点では、これまでの報告では、妊婦の症状は妊娠していない人と変わらず、流産や死産のリスクも高まらないとされています。しかし、妊婦も感染が判明すれば、症状の有無にかかわらず、隔離の対象になります。感染対策が整った別の医療機関に搬送され、短時間で済む帝王切開のお産になることが多くなっています。
通常のお産は、呼吸が荒くなり、妊婦の飛沫が拡散しやすく、長時間に及びます。産後も、陰性になるまで我が子との面会や授乳が制限されます。政府は、不安の解消策として妊婦のPCR検査費の補助も計上しており、希望する妊婦に任意で行われます。しかし、PCR検査は精度が5~7割程度であることからも、全例に実施する必要はありません。分娩の際には手術室と同様の感染対策をしており、症状があると疑われる症例の実施で十分と思われます。
日本産科婦人科学会の5月の緊急調査によれば、お産を扱う医療機関の9割超が、妊婦が育児などについて学ぶ母親学級を中止していました。立ち会い出産や産後の面会も8~9割で禁止されていました。自治体が行う母親学級などの母子保健事業も概ね縮小されていました。第2波に備え、妊娠中のみならず、産後に至るまで、心身のケアのみならず育児支援など、妊産婦が安心して過ごせる支援体制づくりが急務です。
(2020年7月10日 読売新聞)
(吉村 やすのり)