日本で承認されていない薬を海外から輸入し、治療や病気の予防などに個人輸入している人達がいます。薬を輸入する場合、原則として厚生労働省の地方厚生局に薬監証明を発給してもらい、税関に示す必要があります。個人使用が明らかな数量(処方箋が必要な薬で1カ月分)ならば、薬監証明なしで輸入できます。2010年度に約4万件だった薬監証明の発給件数は、2018年度には約8万7千件と倍増しています。一方、薬監証明なしの個人輸入の実態は不明ですが、2008年度で5%だった輸入経験者は、2018年度では10.4%と倍増しています。
インターネットで手軽に購入できる半面、健康被害に遭ったり、偽薬を購入してしまったりすることもあります。副作用のような症状を経験したと答えた人の割合も約16%から約22%に増え、複数回の通院が必要になったケースもあります。過去には、個人輸入したやせ薬や経口妊娠中絶薬で健康被害が起き、死亡事例も報告されています。個人輸入の注意事項は、厚生労働省や偽造医薬品等情報センターのホームページに掲載されています。薬の個人輸入は、品質不良や偽造品混入などの危険性が常にあります。個人輸入が認められているのは、海外で受けた治療の継続や国内未承認薬による治療が必要な場合があるからです。個人輸入を希望する場合は、専門の医師や薬剤師によく相談することが大切です。
(2020年7月15日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)