新型コロナウイルスに感染後、治ったはずなのに、疲れや息苦しさなどの症状が続く人がいます。いまだ新しい感染症のため、長期的な影響は明らかではありませんが、後遺症の報告が少しずつあがってきています。イタリアの報告によれば、最も多い症状は疲労で53%、呼吸困難が43%、関節痛が27%、胸痛が22%と続いています。咳や嗅覚障害を訴える人もいて、55%は3つ以上の症状があったとされています。
回復した患者の肺に、異常が残ることは早くから指摘されていました。肺の線維化により、階段を上ると息が切れ、社会復帰に支障が出ているともみられます。ウイルス感染により免疫が暴走するサイトカインストームが起きると、肺胞という空気の入った小さな壁が傷つきます。線維化した肺胞が多いと、厚いゴム風船に空気を入れるように肺が膨らみにくくなってしまいます。
肺炎が重症化して集中治療室に入院したことがある患者は、肺の機能が落ちるだけでなく、記憶力や注意力などの認知機能が落ちたり、うつやPTSDになったりすることがあります。サイトカインストームにより、肺炎が重症化すると、集中治療室に入る期間が長くなり、せん妄と呼ばれる意識障害や低酸素状態などにより、回復した後うつ症状になる人も出てくるので注意が必要となります。
(2020年7月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)