新型コロナウイルスは、ヒトの細胞に感染して増えます。設計図にあたる遺伝子はRNAからできていて、ヒトなどの遺伝子であるDNAより変異しやすい特徴があります。ウイルスは増える時に遺伝子をコピーしますが、コピーに時々間違いが起き、少しずつ変異していきます。同じくRNAを遺伝子とするインフルエンザウイルスも、現在も少しずつ変異しており、変異がある程度進むと、体の免疫や従来のワクチンが効きにくくなります。そのため、インフルエンザのワクチンを毎年秋~冬に打ちます。
またコロナウイルスは、RNAの変異を修復する働きも持っています。そのためインフルエンザウイルスより、変異のスピードは遅いと考えられています。米ロスアラモス国立研究所などの研究チームは、D614Gという変異を持つ新型コロナが、3月以降に欧州から日本など世界中に急速に広がりました。ウイルスの突起の一部が変化しており、細胞への感染力が、従来に比べて2.6~9.3倍高いことを確かめています。
ウイルスが強毒化すると患者は隔離され、かえって広がりにくくなります。広く流行するウイルスは、弱毒の方向に変異しやすい面もあります。ウイルスが変異すると、新薬やワクチンが効かなくなる恐れもあります。普段から予防し、感染者を減らすことは、ウイルスが強毒化する変異の機会を減らすことにもつながります。
(2020年7月19日 読売新聞)
(吉村 やすのり)