新型コロナウイルスへの対応にかかわるわが国の経費は、2度の補正予算で57兆円を超えました。国の全体の予算額は、昨年度までの100兆円規模から、今年度は一気に1.6倍へ上昇しています。税金による収入を大きく上回る支出を重ねており、借金に寄りかかるいびつな財政の姿は、バブル経済が崩壊してから30年近く続いています。国債発行残高も一気に増え、国の経済規模の2倍近い1千兆円に迫っており、主要国でも突出した水準です。
他の国々も、日本と同じく中央銀行が大量に買い入れる国債を頼りに、大規模なコロナ対策を組んでいます。ドイツは7年ぶりの国債発行にあたり、2023年以降の20年間で返済する計画を決めています。英国では、等しく国の支援を受けたいのなら、将来は等しく負担をしなければならないとし、受益に対する国民の負担のあり方を言及しています。
日本は少子高齢化という、世界でも先をいく構造的な危機を抱えています。感染症や相次ぐ災害など目の前の危機とは別に、少子高齢化は静かに進行しています。出生数は、昨年初めて90万人を割りました。2年後は団塊の世代が後期高齢者に入ります。65歳以上の国民1人に対して、支え手となる現役世代(15~64歳)は、30年前の6人が今は2人です。高齢者の割合は、3割から30年後には4割近くに上ります。高齢者の増加とともに年金や医療費は大きく膨らみ、働き手の世代が減れば税収は先細りします。この先の財政は、日々の暮らしに本当に困っている人を税金でどう支えるかという公助と、地域や国民自身で担う共助や自助のあり方を、国民がどう共有できるかにかかっています。
(2020年7月20日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)