新型コロナウイルスの影響で、多くの医療機関が経営難に陥っています。病院や診療所での感染を恐れた患者が受診を抑え、緊急事態宣言が解除されても元の水準には戻っていません。人口減のわが国は、コロナ前から外来患者数がピークを過ぎた地域も出ており、医療ニーズの変化を見据えた経営改革を迫られています。
病院における4月の平均患者数は、外来で前年同月に比べて2割減、入院も1割減でした。一方、診療報酬も減って、収支は悪化し、赤字病院の割合は45%から67%に増えています。病院も厳しい経営状況に陥っていますが、診療所はより大きな影響を受けています。患者数の減少は、小児科、耳鼻咽喉科や眼科で顕著です。
患者が受診を見送るケースの中には、生活習慣病の治療など継続的な診察が必要な病気が含まれている可能性があります。症状を自分できちんと説明できない小さな子どもの受診を親の判断で抑えると、大きな病気を見逃すリスクも出てきます。オンラインが浸透しても、患者はコロナ前の水準までは戻りそうにありません。感染防止意識が高まり、高齢者の発熱など病気そのものが減っているとの指摘もあります。さらにもともと過剰だった診療が、コロナでふるいにかけられた面があります。コロナ患者を診る病院への手厚い支援は必要ですが、診療所などの損失を、診療報酬や税金で一律に穴埋めするような救済策は、過剰な医療を復活させるだけになりかねないとの考えもあります。
(2020年7月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)