遺伝情報を使うワクチン開発

ワクチンの開発や製造には、通常年単位の時間がかかります。その時間を大幅に縮める方法として、DNAやRNAと呼ばれる遺伝子情報を使ったワクチンの開発が世界中で進んでいます。ワクチンには、新型コロナの遺伝情報の一部が含まれており、接種すると体内で新型コロナのたんぱく質ができて、免疫細胞が抗体を作ります。DNAは大腸菌などを使って大量に増やすことができ、RNAもバイオ技術で人工合成できるので、短期間でワクチンを作ることができます。
しかし、これまで、DNAやRNAを使うワクチンは、新型コロナ以外の病気でも、人で実用化した例がありません。理論上は効くように設計されていますが、本当に予防効果があるかは、最終段階の結果が出ないと判明せず、安全に使えるのかも不明です。英アストラゼネカ社はDNAで、米モデルナ社はRNAで、ワクチン接種による中和抗体ができたとしています。しかし、これまでの報告では、一時的な頭痛や発熱など、軽~中程度の副作用も確認されています。現段階では、過度の期待は禁物です。
国立感染症研究所などは、感染力をなくした新型コロナを接種する従来型ワクチンの開発も進めています。どのワクチンが効くか不明な中、時間はかかっても、昔からある実績のある方法でワクチンを作る試みは必要です。

(2020年7月29日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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