脳梗塞の血栓回収療法の進化

脳梗塞は年間約6万人が亡くなっています。不整脈や心房細動によって血栓ができて脳血管に飛ぶものと、脳血管そのものに血栓ができるものがあります。後遺症を残さないためには、できるだけ早くに血栓を除去して脳細胞のダメージを最小限にすることがカギとなります。
脳梗塞を起こした直後に患者の脳の血管に小さな医療器具を入れて、原因となっている血栓を取り除く脳血栓回収療法が進化してきています。発症から4時間半~24時間で、CTやMRI検査で脳梗塞巣がまだ小さくて大きな血管が詰まっている場合、効果が期待できます。足の付け根に切れ目を入れ、カテーテルを通して脳内の血管に届かせ、血栓を取り除きます。日本では、2010年以降、らせん状のワイヤで血栓を絡めとるタイプや血栓を砕きながら吸引除去するタイプの医療機器が承認されています。最近は、ステント型タイプと吸引除去タイプとを組み合わせて使うのが主流になっています。

脳血栓回収療法は、詰まった血管を再開通できた割合は8割以上、その後の経過が良い人の割合も5割以上という報告があります。急性脳梗塞への治療では、治療薬を静脈点滴して血栓を溶かすtPA静脈療法が2005年に承認されています。脳血栓回収療法ができない小さな血管の詰まりには、効果が期待できる利点があります。

(2020年8月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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