新型コロナウイルスの感染者が再び増加する中、PCR検査のスピードが上がりません。検査の体制は1日3万件超にまで拡大していますが、患者が結果を受け取るまでに3日程度かかります。判定に時間がかかれば、その間に無症状の陽性者が感染を広げかねないことになります。検査時間を縮める装置の活用や、検体輸送の効率化が課題となっています。
多くの医療機関は、検体を衛生研究所や検査会社などに輸送し、PCRの結果を待つ仕組みをとっています。検体を運ぶ場合、WHOの規則と厚生労働省の省令に基づき、病原体を入れる密閉性の高い容器を緩衝材と吸収材で包み、さらにそれを二重の容器で包む三重梱包の措置をとらねばなりません。検体は、専門業者が複数の医療機関から集めて輸送に回しますが、作業は1日がかりとなってしまいます。検査結果を診断書にする作業も時間がかかります。医師が複数患者の検査データを読み込むのは容易ではなく、患者の手元に診断書が届くまでに検体の採取から2~3日かかってしまいます。
日本でも検査のハードルを下げようと、日本医師会が地域のかかりつけ医の判断でPCR検査が受けられるようにする方針を打ち出しています。クリニックのかかりつけ医が検査に主体的にかかわれるようになれば、感染疑いがある人を幅広く捕捉しやすくなります。クリニックでも時短検査の設備を導入できるような政府支援があれば、検体輸送の問題が無くなり、診断書作成の煩雑さも緩和されることになります。
(2020年8月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)