M字カーブは、女性の働き方を示す特徴として、長年注目されてきました。20代に上昇した就業率が、出産・育児期にあたる30代に落ち込み、再び上がる様子がM字に似ていることからそう呼ばれてきました。継続就業を拒む壁の解消が課題とされてきましたが、働く女性の増加でM字の谷が浅くなり、M字カーブは解消されつつあります。
政府の文書に、M字カーブに代わってL字カーブが登場してきています。女性の働き方は、依然フルタイムの正規雇用とパートタイムの非正規雇用に二極化しており、働き方の選択肢も不十分であるとされています。正規雇用率が20代後半に5割を超えてピークに達した後、一貫して下がり続けます。これをL字カーブと名付け、新たな課題とされています。
保育の受け皿の拡大などでM字は解消されつつありますが、出産後、非正規雇用の選択肢しか事実上残されていないのは問題です。非正規が多い中、子どものいる女性が離婚した場合は、貧困問題も生じます。第1子出産後の継続就業率は高まってきたものの、53.1%にとどまっています。政府の有識者懇談会「選択する未来2.0」の中間報告では、正規化支援策として、非正規で働く人がキヤリアを積むための政府の助成金や、正規雇用率など企業による情報開示の拡充などに言及しています。短時間勤務の正社員などの選択肢を増やし、出産後の継続就業率を高めることを求めています。
(2020年8月14日 読売新聞)
(吉村 やすのり)