各国大学の対面授業の遅れ

新型コロナウイルスの感染再拡大で、世界の大学が対面授業の全面再開に二の足を踏んでいます。秋の新学期もオンラインによる遠隔授業が中心になる見通しです。教育の質が下がると、雇用などで不利益を受けるロックダウン世代が生まれ、将来の国の競争力も落ちてしまいます。教員の指導力向上や学生支援を通じ、教育の質を高めることが急務です。
世界の大学は、今春軒並み封鎖となり、感染が収束せず遠隔授業を続けざるを得ない状態です。対面を認める大学も対策を徹底しています。米マサチューセッツ工科大学は、対面指導を受ける学生全員に同大学が提供する健康状態の管理アプリを使ってもらい、感染の防止や早期発見につなげています。
世界の有力大学は対策を急いでいます。秋からの新学期の全授業を遠隔にする米ハーバード大学は、大学院生を支援フェローとして採用しています。大人数が聴講する授業は全て遠隔にする英ケンブリッジ大学も、傘下の大学出版局と連携し、デジタル技術を使い、授業でどう説得力や臨場感を持たせるかを検討しています。独ベルリン自由大学は、学生が自宅で試験を受ける際はネット閲覧を制限する試験監督ソフトを導入しています。
大学は、学生が友人との交流や課外活動を通じ多様な経験を積み、人脈を築く場でもあります。こうした機会が減り、教育効果が損なわれれば、多様な人材が育たず、将来的な国の経済力の低下につながる可能性があります。

(2020年8月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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