2018年の経済協力開発機構(OECD)調査によれば、日本は小学校と中学校長の女性割合が、調査30カ国の中で最下位です。中学校長の女性比率は7%で、平均47%と比べ大差がついています。女性管理職が増えないのは、家庭との両立が難しいためです。特に教頭の労働時間が長くなっています。国立女性教育会館が実施した調査によれば、1日の平均的な在職場時間が12時間以上の教頭ならびに副校長は、小学校で75%、中学校で81%でした。
校長になるには、教育委員会が実施する管理職試験を受けたのち、教頭として実績を積むことが多くなっています。業務は校長補佐から保護者対応、事務に至るまで多岐に及びます。生徒のためにと残業をいとわない聖職意識のあまり、本来効率化できるはずの作業に追われることも多くなっています。部活動も一因です。管理職試験は、校長の推薦を受けた教員が受験するのが一般的ですが、部活動に熱心な教員が評価されがちで、家事や子育てを理由に担当できないと不利になってしまいます。
事務作業や長時間労働を見直し、管理職の負担軽減に取り組み、女性校長が就きやすくするような職場環境を整えることが大切です。教員の働き方が、子どもたちの性別の役割分担意識に影響を与えることも考えられます。子どもたちの眼前で、女性リーダーが活躍する姿を見せることは、社会全体の意識改革を進める早道にもなります。
(2020年8月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)