新型コロナワクチンの治験中断

新型コロナウイルス感染症の予防用のワクチンについて、英製薬大手アストラゼネカは、最終段階に入っていた臨床試験(治験)の一時中断を明らかにしています。ワクチン接種との関連は分からないとのことですが、英国で治験の参加者が、痛みや痺れを起こす横断性脊髄炎と診断されたと報じています。治験は、一般的に100人以下で安全性をみる1相、数百人で効果や安全性をみる2相、数千人で発症や重症化を防ぐ効果をみる最終段階の3相というステップが必要になります。8月下旬から始めた1、2相(被験者約250人)の治験を中断したとしています。
ワクチン開発は通常10~15年かかり、過去最短とされるおたふくかぜでも実用化に4年かかっています。ワクチンは健康な人にも接種するため、薬以上に安全性を慎重に見極める必要があります。3相の治験までこぎ着けても、安全性や効果が証明できず、断念するケースは珍しくありません。声明の背景には、各国政府がワクチン開発で前のめりになり、安全性や効果がないがしろにされているとの懸念を打ち消す意図が見えます。

(2020年9月10日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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