ALSの介護支援

厚生労働省によれば、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断され、医療費の公的助成が認められた患者は、2018年度末で9,805人です。60歳以上が8割を占め、高齢化に伴って患者数は年々増えています。発症すると数年で人工呼吸器を装着するかどうかの選択を迫られますが、生活の質の低下や家族の介護負担などを懸念し、患者の約7割は人工呼吸器を付けずに亡くなっています。
ALS患者の場合、いったん装着した人工呼吸器は外すことができません。外せば死に直結するほか、安楽死が認められていない日本では医師など外した人が罪に問われかねません。人工呼吸器をつけるために気管切開をすれば、患者は24時間の介護が必要になり、発声も難しくなります。ALS患者を含め重い障害を持つ人向けの公的な介護サービスとしては、障害者総合支援法に基づく重度訪問介護があり、今年5月時点で約1万人が利用しています。利用者の費用負担は原則1割で、残りを国と都道府県、市区町村の公費で賄っています。1日24時間のサービスを求めても、家族による介護が可能などの理由で、短い時間しか認められないケースがあります。
生と死が隣り合わせの難病患者に寄り添い、支え、心を通わせるのは簡単なことではありません。生きるという選択を支えるには、生きていて良かったと感じてもらえる支援体制が欠かせません。

(2020年9月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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