サイコオンコロジーの必要性

サイコオンコロジーとは、心の研究を行う精神医学(サイコロジー)と、がんの研究を行う腫瘍学(オンコロジー)の造語で、精神腫瘍学と訳され、1980年代に確立した学問です。毎年100万人を超える方ががんに罹患し、37万人を超える方が亡くなっています。がんと心を対象としたサイコオンコロジーの重要性は益々高まっています。
サイコオンコロジーが取り組む課題の一つに、患者へのがん告知後の精神的負担の軽減が挙げられます。早期乳がん患者の3人に1人が、うつ病や不安を抱えていると明らかになっています。がんは診断から最初の1年に患者の心に大きなインパクトを与え、その後5年、10年と再発の不安など慢性的な苦悩を与えます。米の大規模疫学研究調査によると、がんの部位によって自殺率は大きく異なることが分かります。がん患者の心のケアを行うサイコオンコロジストには、個々人に応じたきめ細かな対応が求められます。

サイコオンコロジストは、患者に直接かかわるだけではなく、日頃からがん治療に携わる医療スタッフが患者の心理面に対しても良いケアができるようにサポートすることも必要となります。

(2020年9月21日 週刊医学界新聞 第3388号)
(吉村 やすのり)

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