新型コロナ重症者に対する腹臥位治療

新型コロナウイルスに感染し、重症の急性呼吸促迫症候群(ARDS)になった患者の治療法として、腹臥位療法が注目されています。うつぶせにする時間を設けることで肺の換気機能を改善でき、WHOや厚生労働省も推奨しています。重症ARDSに対しては、確立した治療薬などがないため、腹臥位療法は生命予後の改善効果が見込める有望な治療法の一つです。
腹臥位療法は、元々、肺炎や敗血症などで生じた重症ARDSの患者の治療法として用いられてきました。肺の換気機能は、肺の背側に大きく依存しています。仰向け状態が続くと、重力の影響で背側に血流が集まる上に、圧迫で肺の背側が潰れて、血液の酸素化が悪化してしまいます。健常な肺の胸側にも障害が生じやすくなります。うつぶせに変えることで、改善することを期待できます。
重要なのは、対象を重症者に限定し、早期に始め、1日12時間以上うつぶせにすることだとされています。このためガイドラインでは、短時間の腹臥位管理では、十分な効果が得られない可能性があります。新型コロナの重症患者に腹臥位療法を行うには、すでに重症ARDSでこの療法に熟練したスタッフが十分な人数いることが必要となります。

(2020年9月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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