非正社員と正社員の待遇格差をめぐる2件の裁判で、原告側は正社員と同じ仕事なのに賞与(ボーナス)や退職金がないのはおかしいと訴えましたが、最高裁はいずれも不合理とまで評価できないとの判断を示しました。一部の支給を認めた高裁判決を一転させています。
判決は、ボーナスや退職金の支給目的を、正社員としての職務を遂行しうる人材の確保や定着を図るためとして、非正社員に支給しないことが不合理ではないとしています。退職金やボーナスの支給目的について、正社員としての職務を遂行しうる人材の確保や定着を図るためとしています。経営判断の自由を訴える経営側の主張に沿う内容で、事実上、経営側の裁量に理解を示したものです。
ボーナスや退職金は、性格が複雑です。賃金の後払いや功労報償など、複数の性格があると考えられているうえ、会社の業績や個人の評価、勤続期間を金額にどう反映させるかといった具体的な制度設計は、企業によってまちまちです。今回の判決は、ボーナスや退職金は、正社員への長期雇用の動機づけだとする経営側の主張を採り入れた形です。企業が、今回の判決を非正社員にボーナスや退職金を払わない根拠にすれば、格差是正の動きは鈍ることになります。
(2020年10月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)