男性の育児休業が注目されています。国は育休を取るよう社員に勧めることを企業に義務づける法改正を検討しています。国家公務員に対しては一足早く、1カ月以上の取得を促す試みが今春始まっています。国家公務員には、子の出生後8週間以内に取れる有給の特別休暇が計7日間あります。男の産休と呼ばれるこの休暇と、通常の育休を組み合わせるのが基本です。政府は①合計1カ月以上、②なるべく1年以内、③生後8週間までに一定期間をまとめて取得してと呼びかけています。
内閣人事局によれば、4~6月に子供が生まれた男性職員3,035人のうち、85%が1カ月以上の育休を予定しています。予定日数の平均は43日です。特別な事情がない限り、1カ月は休むのが当たり前という空気ができつつあります。国家公務員に対する取り組みは、民間企業に男性育休を広げるための地ならしです。
もともと日本の育休制度は手厚くなっています。企業規模にかかわらず、会社に申請すれば子供が1歳になるまで何日でも取得できます。期間中は無給になりますが、国の雇用保険から最初の半年間は月給の67%が支給され、社会保険料も免除されます。平均的な会社員なら、実際の手取り額の8割程度は保障されます。男性は女性と異なり、一定の条件下で2回に分けて取得することも可能です。それでも、2019年度の男性の育休取得率は7.48%にとどまっています。2018年度から1.32ポイント上昇したものの、政府の2025年度に30%という目標には遠く及びません。期間も半数以上の女性が1年前後は休むのに対し、男性は2週間未満が7割を占めています。
夫が育児にかかわる時間が長いと、妻が継続して働く割合や第2子以降が生まれる割合が高い傾向があります。少子化に歯止めをかけつつ働き手を確保するには、共働きでも子供を産み育てやすい環境をつくることが不可欠です。男性の育休取得を促す霞が関の取り組みは、育児と仕事の両立をどう支えるか悩む企業に好影響を与えると思われます。
(2020年10月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)