海外医学部卒医師の増加

海外の医学部に進学する日本人学生が増えています。卒業後に日本の医師免許を取得できるルートが広がり、私大医学部に比べ総費用が少なく済む国もあるためです。外国人の取得者も増え、海外大卒の医師国家試験合格者は国内の医学部1校の入学者に相当します。海外の大学医学部は日本より進級審査は厳しいことが多く、少人数での授業が中心です。
日本は、2005年に海外大卒に医師国家試験の門戸を本格的に開きました。それまで医師法は、国内の卒業生と同等以上の学力や技能を有するなら受験できるとだけ規定していました。あいまいな基準を改め、6年以上、4500時間以上の専門教育受講、教員数が日本の大学と同等などと受験資格の要件を定めました。2010年代に入って海外大卒の合格者は増え始め、2019年度は97人と5年前の1.6倍に増加しました。国内約80校の医学部1校分の入学者にあたり、半数を日本人が占めています。
目立つのがハンガリーやチェコなど東欧の医学部の卒業生です。物価が安く、学費と生活費を合わせた総費用で2千万円前後と、2千万~4千万円が相場の日本の私大医学部の学費より安くなっています。海外への進学を支援する自治体もあり、茨城県には県内で一定期間働くことを条件に留学費用を貸与する制度もあります。
2008年度以降、医師不足の地域をなくすため医学部定員を臨時的に増やす形で医師数を増員してきました。しかし、課題は解消されつつあるとして2022年度以降は定員減員を検討する方向です。海外大卒の医師が増え続ければ、医師余りが起きかねないとの見方もあります。

(2020年10月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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