時間栄養学によるリズム調整

ヒトの体には、1日のリズムを刻む体内時計が備わっています。体内時計は、睡眠、体温、血圧、ホルモン分泌といった生理機能を制御する役割を担っています。体内時計は脳の視交叉上核という部分にある主時計と、内臓や筋肉など全身の組織に存在する副時計があります。1日24時間周期で生活をしていますが、体内時計の周期はそれよりも少し長くなっています。
そのため、毎日リセットして、24時間周期に合わせる必要があります。この調整を行っているのが、光と食事による刺激です。脳の主時計は、起床後に目の網膜を通して光を感知するとリセットされます。同時に、全身の副時計にもリセットするように指令を出します。この副時計は、起床後に食事をすることでもリセットされることが分かってきました。
体内の乱れは、肥満や睡眠障害、抑うつ、アレルギー疾患、がんのリスクを高めることも分かってきています。遅寝・遅起きになり生活のリズムが夜型化した人は、体重が増加し、睡眠の質も低下する傾向が見られます。体内時計を整えるには、起床後1時間以内に食事をとることが大切です。起床後の食事を抜くと、副時計は、その後にとる食事を1日の始まりと認識するため、脳の主時計とズレが生じて、体が時差ボケの状態になってしまいます。食事は、その人の活動時間に合わせて朝・昼・夜と3食とり、朝は体内時計を動かしにくい食材を選ぶと良いとされています。
朝食は活動を始める2~3時間前にとることが良いとされています。仕事を9時に始める人なら6~7時です。米やパンなどの穀類(糖質)とたんぱく質を中心に、和食ならごはんに焼き魚、豆腐の味噌汁、洋食ならツナやチキンのサンドウィッチ、ヨーグルトなどを組み合わせると良いとされています。夕食は朝食から逆算して10時間は空けなければなりません。就寝の2~3時間前に済ませることが大切です。糖質は控えて、根菜やキノコ類などの食物繊維を中心にとります。食事の量は朝・昼・夜が4・3・3の比率になるバランスが理想的です。

(2020年10月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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