iPS細胞によるパーキンソン病の治療

神経の難病であるパーキンソン病は、60歳以上では100人に1人が発症するとも言われ、高齢化に伴って患者は増え続けています。パーキンソン病はドーパミン神経細胞が徐々に死んでいくことにより発症します。この細胞は、ドーパミンという物質を作って他の神経細胞に届け、体がスムーズに動くよう調整しています。患者はドーパミンが出せなくなるため体が動かしにくくなり、震えます。進行すると歩行、言葉や表情を表すことも難しくなります。
iPS細胞から作った神経細胞を脳に移植する治験が京都大学で進んでいます。iPS細胞は、神経を含めた体内のほぼすべての細胞に変化できるだけでなく、無限に増やせることも強みです。十分な数に増やしてからドーパミン神経細胞に変えれば、十分な量の細胞を確保できます。ドーパミン神経細胞をiPS細胞から作って脳内に移植します。
研究グループは、不要な細胞が混じらないようにドーパミン神経細胞だけを作る技術を確立しました。パーキンソン病を再現したサルでの実験で、移植した細胞が脳内に定着し運動能力が改善することを示しています。注入した細胞は、脳内で神経ネットワークを再び築いていることを確認しました。
将来は、脳梗塞や頭部外傷の治療も可能になるかもしれません。そのためには、脳の一定の領域が全体的に壊れるため、複数の細胞が組み合わさった組織であるミニ臓器を再生するような、次の世代の再生医療が必要になります。

(2020年11月2日 中日新聞)
(吉村 やすのり)

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