過活動膀胱の新しい治療

過活動膀胱は、神経系の病気などで脳による膀胱のコントロールがうまくできなくなり、急に我慢できないほどの尿意に襲われる病気です。患者は頻繁にトイレに行かなければならなくなったり、尿のにおいが漏れていないか気になったりして仕事に集中できなくなったりします。日本では40歳以上の8人に1人が罹るとされ、高齢になるほど罹患率は高くなっています。
治療の第一段階では薬を使います。神経から分泌され、膀胱の収縮を促すアセチルコリンの働きを抑える薬が従来使われてきました。ただ便秘を引き起こしたり、認知症のリスクを上昇させたりする副作用が起こることがあります。2018年9月に健康保険適用となったベオーバは、従来薬に表れた副作用がほとんどないとされています。この薬も膀胱の容積を広げて尿漏れを防ぐ作用があります。
薬剤の十分な効果が見られない患者は難治性と診断され、手術が必要になります。負担の少ない治療法として期待を集めるのがボツリヌス毒素注射です。ボツリヌス菌の毒素は筋肉を麻痺させる効果があり、この毒素を膀胱に注射して過度に収縮するのを防ぎます。効果は4カ月から8カ月ほど持続します。ボツリヌス毒素注射法は2020年4月に健康保険の適用になり、1回3万~5万円ほどの自己負担で施術できます。

過活動膀胱の治療には、生活習慣の見直しや排尿に関わる筋肉の訓練などの行動療法も有効です。組み合わせて取り組めば、薬の使用量などを減らせる可能性があります。行動療法では、水分や利尿作用のあるカフェインを過剰に摂取しないようにします。トイレに行くのを適度に我慢することで膀胱を訓練する方法もあります。膀胱に尿を貯める量が増えるので排尿の回数が減ります。排尿をコントロールする骨盤底筋を、肛門を締めるようなイメージで鍛えるのも有効です。

(2020年11月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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