医療費審査のシステム統一

厚生労働省は、医療機関による診療報酬の請求内容が適切かどうかを審査するシステムを2021年9月に全国で統一します。現行システムは、都道府県ごとに独立しており、地域によって審査基準がばらつき、同じ医療内容でも患者の負担額が変わることがあります。医療の無駄や患者の不利益を生むことがあるため、政府のデジタル化の一環として改善に取り組みます。
社会保険診療報酬支払基金(支払基金)は、主に現役世代を診療した医療機関が発行する診療報酬明細書(レセプト)を審査し、健康保険組合など保険者から医療機関に診療報酬を給付すべきかどうかを決めています。審査で不適切と判断されれば、請求額から減らされてしまいます。今は各都道府県の支部にあるコンピューターでまず事前チェックし、その上で全レセプトを人の目で審査しています。地域ごとにシステムが完結しているため、審査基準がばらつき、結果も異なる事態を招いています。
患者の不利益にもつながっています。入院医療費が総額20万円なら患者は窓口で3割分、6万円を支払います。審査で20万円のうち5万円が不適切と判断され医療費が減額されると、患者は1万5千円を払い過ぎたことになります。患者は医療機関に返還を求めることができますが、通知が届くのは原則1万円以上の過払いだけです。
支払基金は、2021年9月をめどに一元化を目指しています。人工知能(AI)を使い、人の目で審査するレセプトとそうでないものを自動的に選別する仕組みも導入し、2023年に全体の9割をコンピューターだけの審査とします。

 

(2020年11月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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