糖尿病や高血圧などで末期腎不全になると、命を維持するため透析治療か腎臓移植が必要になります。日本透析医学会の調査では、2018年末で透析患者は約34万人に達しています。医療機関で標準の週3回・1回4時間程度の透析を受ける人が大半です。自宅で比較的簡単にできる腹膜透析の利用者も、9千人以上います。腹膜透析はお腹に管を挿入し、臓器を包む腹膜内に透析液を入れます。しかし、管を介した感染や、腹膜硬化症という合併症のリスクがあり、血液透析ほど長くは続けられません。
近年在宅での血液透析が注目されています。自宅での血液透析だとより多くの回数が可能で、寿命が延び、生活の質も上がる効果が得られています。欧米のデータでは、在宅血液透析を週6回・1回2時間ほどした場合、標準的な血液透析よりも寿命が延び、腎移植を受けた人とほぼ同じとされています。しかし、在宅血液透析に切り替えにくい理由はいくつかあります。患者自身が毎回腕に透析用の針を2本刺し、透析装置を操作する必要があります。針刺しや操作は医療スタッフから習い、訓練に数カ月かかることもあります。装置のトラブルなどに備え、透析中に介助者がいる必須条件もあります。
医療費負担は、通常の透析と同じ月1万~2万円ですが、透析に使う電気・水道代だけで地域よっては月1万~2万円ほどかかります。給水・排水設備などの工事が必要な場合もあります。条件に合う人は、現実には限られてしまいます。医療機関側も取り組みにくい状況にあります。緊急時のために24時間の連絡体制が必要で、標準的な透析を医療機関でしてもらう方が現時点では収益性が高くなっています。
(2020年11月11日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)