新型コロナウイルスによる脳障害

新型コロナウイルスは、深刻な脳障害を起こす恐れがあります。髄膜炎や脳炎、意識障害のほか、記憶障害が出る人もおり、後遺症が心配されています。
ウイルスが嗅神経や血管を通って脳の細胞に直接感染する場合と、脳以外の臓器への感染が引き金になる2パターンが考えられています。前者の場合、脳内で増えたウイルスが炎症を起こし、脳の中枢神経を傷つけます。後者の場合、他の臓器への感染により、サイトカインストームと呼ばれる免疫の暴走が起き、全身に炎症が起き、脳の中枢神経にも影響を与えます。脳脊髄液のPCR検査で陰性例が多いことや、髄液中のサイトカイン増加が報告されていることから、直接感染ではなく、サイトカインストーム説が有力です。
しかし、直接感染をうかがわせる研究もあります。ヒトのiPS細胞に由来する神経細胞でできた脳のミニ組織を使い、ウイルスが神経細胞に感染することが明らかにされています。さらに、ウイルスが感染した細胞内で増え、周囲の細胞から酸素を奪うことで、周囲の細胞を死滅させていることも明らかにされています。
重症化して脳障害が出る頃には、既にウイルスが全身に回っており、感染経路が特定できない場合が多くなっています。いずれにしても、どのようなメカニズムだとしても脳への影響は起こりえます。

(2020年11月15日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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