新型コロナウイルスに対する新技術ワクチンの開発

新型コロナウイルスに対し、メッセンジャーRNA(mRNA)技術と呼ぶ新手法を使ったワクチンが開発終盤で相次ぎ高い有効性を示しています。米製薬新興モデルナと同大手のファイザーが、このほど共に90%を超える高い数値を達成したとしています。mRNAは、遺伝子配列さえ分かれば、素早く安全にワクチンを製造できるメリットがあります。米製薬新興モデルナは、中国で発表された新型コロナの遺伝子配列情報をもとに2月からワクチン開発を開始し、体内に入ったmRNAが生成した新型コロナのたんぱく質を免疫細胞に認識させ、抗体を作り出すことに成功しました。新型コロナ向けのmRNAワクチンの実用化が進めば、他の医療分野にも技術を転用しやすくなります。
課題は実用化の後でも、同じ有効性を示せるかです。モデルナによると臨床試験参加者のうち、有効性データ取得の対象とした人は、高齢者のほかヒスパニック系、ラテン系、黒人、アジア系と人種の幅も広くなっています。しかし、両社が発表した90%以上という有効性の数字は、限られたデータによる暫定値にすぎません。いずれも治験参加者のうち新型コロナに感染した90人程度を対象に、何人が実際にワクチンを投与されていたかとの分析にとどまっています。母集団が増えると、ワクチン接種者でも感染率が増える場合があります。そうなると有効性は今より下がってしまいます。
有効性の評価も、必要量を投与後7日から2週間とあまり間を置かずに実施しています。仮に6カ月後に予防効果を調べると、有効性が50%以下になる可能性が指摘されています。本当の検証はこれからです。少なくとも半年から1年以上は見極める必要があります。まだまだワクチンに過度な期待はできません。

(2020年11月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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