慶應義塾大学らのチームは、子宮を移植したサルに子どもを産ませることに世界で初めて成功しました。サルはすでに5月に生まれており健康です。海外ではヒトの子宮移植による出産例が約40例ありますが、国内では実施例はありません。
チームは、あらかじめ子宮を摘出したカニクイザルのメスに、ほかのメスの子宮を移植しました。免疫抑制剤を使いながら、体外受精させた受精卵を子宮に戻し、妊娠させました。子宮移植のために子宮を摘出する手術は、移植後に再び子宮を使えるように、子宮周辺の太い血管を残すなど高度な技術が必要になります。チームは、ヒトでの実施をめざしこれまでサルで研究を続けてきました。2017年に今回出産に成功したサルに子宮移植手術を実施し、2018年には妊娠に成功しましたが、2度流産しました。
ヒトに近い動物で、妊娠・出産ができ、技術的には問題ない状況になっていると思われます。サルを用いたこうした前臨床試験は重要であり、海外からはヒトの報告はありますが、霊長類を用いた報告はありません。今後の臨床応用が大いに期待されます。
(2020年11月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)