東京大学の研究グループは、新型コロナウイルスが遺伝子変異により感染力を増したことを動物実験で確かめました。現在欧州などで広がる変異ウイルスが飛沫感染しやすいことを、ハムスターの飼育実験で明らかにしました。人で同じことが起きているとは断言できませんが、ウイルスに変異が生じることでワクチンや治療薬の効果が薄れる恐れもあります。
実験では流行中のウイルスと同じ変異を持つウイルスを人工的に作り、別のゲージに入れたハムスター同士を近くに置き、片方にウイルスを感染させて飛沫感染のしやすさを調べました。中国で確認された流行初期のウイルスでも、同様の飼育実験をして比べています。2日後の時点で、変異ウイルスは8匹中5匹が感染しましたが、初期のウイルスは1匹も感染していませんでした。
今回の変異では、病原性は強くなっていないことも分かりました。初期ウイルスをもとに開発中のワクチンは、変異ウイルスに対しても効果が期待できるとされています。一般にウイルスは、一定の確立でランダムに変異を繰り返します。1つの変異でウイルスの性質が変わります。変異ウイルスが短期間で世界中に広まる一因となった可能性が指摘されています。
(2020年11月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)