健康な状態なら、背骨は横から見ると緩やかなS字カーブを描き、しなやかに動きます。激しい運動の繰り返しや加齢などによって、背骨をつなぐ軟骨の椎間板が弱くなることや、骨や靱帯が脊柱管に張り出すことで、神経を圧迫することがあります。神経は足先までつながっているため、広い範囲で痛みなどを起こすことがあります。
座骨神経痛は、正式な病名ではなく症状の総称です。発症する時期によって、主な原因が異なります。20~40歳代は、椎間板の中にある髄核という組織が飛び出し、近くの神経を圧迫する椎間板ヘルニアの患者が目立ちます。腰に大きな負担がかかるような肉体労働をする人に多く、前かがみで重い物を持ち上げる動作には特に注意が必要です。
中高年においては、脊柱管が狭くなって内側の神経を圧迫する脊柱管狭窄症が、座骨神経痛の主因となります。椎間板がはみ出したり、骨のとげや厚くなった靱帯が神経に触れたりするなど、加齢に伴う変化によって起こります。この他、腰椎が前方にずれるすべり症などが原因となることもあります。重症になると、脚に力が入らなくなったり、排尿や排便が制御できなくなったりするなどの症状が出ることもあります。
正確な診断には、レントゲンやMRIなどによる検査が必要です。①立っただけで、お尻から足先にかけて痛みや痺れが出る、②自転車には乗れるが、長い時間は歩けない、③姿勢が悪くなってきたなどに当てはまれば、座骨神経痛が疑われます。
症状が軽い時は、ウォーキングなど、無理のない範囲で定期的に体を動かすようにします。痛みが強い時には、安静にするか、腰の動きを制限するコルセットなどをつけ、炎症を抑える薬を服用します。日常生活に支障が出てくるようであれば、手術を検討します。予防には、腰を曲げすぎたり反らせすぎたりせず、良い姿勢を心がけ、筋力と体の柔軟性を保つことが重要です。
(2020年11月15日 読売新聞)
(吉村 やすのり)