コロナ禍による生活危機のセーフティーネット

今回のコロナ禍では、飲食業などの自営業者や正社員、フリーランスの芸術家やインストラクターなど、多様な職種の人々が生活の困窮状態に陥っています。女性の雇用が大きなダメージを受けています。奨学金とアルバイトで生計を立てる大学生から、年金不足で仕事を続ける高齢者まで、年齢層も幅広くなっています。
貧困危機の公的支援の柱は、家賃補助にあたる住居確保給付金(原則3カ月、最長9カ月)と、社会福祉協議会が窓口になる無利子・保証人不要の特例貸し付けです。この特例貸し付けには、緊急小口資金(最大20万円)と総合支援資金(最大月額20万円×3カ月が原則)の2種類があります。住居確保給付金は、これまで離職・廃業から2年以内の人しか申請できませんでしたが、特に休業などで減収になった人も対象になり、自営業者・フリーランスの人も申請可能となっています。
今年4月の生活保護申請は、前年同月比24.8%増と跳ね上がりましたが、5~8月の申請は前年水準を下回っています。要因として、生活保護の手前の安全網を国が大幅に拡充し、それを多くの人々が利用していることによります。厚生労働省が支援策をまとめたリーフレットには、「生活保護申請は権利であってためらわず相談を」と明記されています。しかし、かつて吹き荒れた生活保護バッシングなどの影響で、制度への偏見や誤解は根強いものがあります。負のイメージを解消するよう、なお一層の積極的な制度の広報や周知が求められます。

(2020年11月16日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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