新型コロナウイルスの母子感染

新型コロナの母子感染は早くから指摘されていました。7月に米国のチームが39本の論文や報告を分析したところ、感染した妊婦から生まれた936人の赤ちゃんが、48時間以内に鼻の奥のPCR検査を受け、3.2%が陽性だったとしています。一般的にウイルスが赤ちゃんに侵入するルートは、胎盤や臍帯血、羊水、膣、母乳など様々です。新型コロナでは胎盤を通じたルートが有力だとみられています。
フランスの研究チームは、7月に新型コロナに感染した母親と帝王切開で生まれた赤ちゃんの両方の血液などからウイルスが出て、特に母親の胎盤のウイルス量が多かったと発表しています。母親の血液に含まれたウイルスが胎盤を通じて、胎児に届いたと推測しています。10月にイタリアのチームが、胎盤や臍帯血、羊水、母乳などのウイルスや抗体を調べたところ、胎盤や臍帯血からウイルスがみつかったと報告しています。
理論的には母親のお腹の中で胎児への感染が起こりうるのは問題いないと思われます。頻度や症状については判断できるほど症例がなく、今後の調査が必要です。国内では、疑わしい例はあるものの、母子感染が起きたと証明された例はありません。過剰に心配する必要はありませんが、妊婦は人混みを避けるなど注意しつつ、一緒に暮らす家族もウイルスを持ち込まないよう気をつけることは大切です。

(2020年11月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。