新型コロナウイルスの重症患者の治療に使われる体外式膜型人工肺(ECMO)は、血液を体外に取り出して二酸化炭素を取り除き、酸素を加えて再び体内に戻します。ECMOが肺の役割を担うことで、炎症を起こした肺を休ませ、回復に向かわせることができます。
集中治療医らでつくるエクモネットによれば、ECMOが使われた新型コロナの患者で分析できた273人で、最も多いのが60代で34.8%、次いで50代で28.9%、70代で19.4%です。使った場合の救命率は約70%で、海外に比べて高くなっています。
日本集中治療医学会によれば、ECMOは全国で少なくとも1,400台設置されています。しかし、実際に新型コロナの治療のために動かせる台数は、それを大きく下回っています。背景には、これまでは心臓手術中などに短時間で使われることが多く、新型コロナの治療のように肺に長期間使用した経験のある医療者が少ないという事情があります。ECMOは体の血管に2本の太い管を刺すため、出血や感染症のリスクがあります。技術と経験を持った医師や看護師、臨床工学技士らがチームを組んで24時間態勢で管理する必要があります。
(2020年11月20日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)