日本の千人当たりの病床数は、先進国で最高水準で、米英の約5倍です。それにもかかわらず、春先のコロナ感染爆発時には病床不足が問題になりました。新型コロナウイルス危機は、地域の医療体制の権限を持つ都道府県の力量を試しています。新型コロナとの戦いで、都道府県の体制整備の責任に焦点が当たっています。
国はこれまで都道府県に地域医療構想を作るよう求め、過剰な急性期病床の削減などを進め在宅医療への転換を促してきました。しかし、都道府県は民間病院に病床機能の転換を促すことをためらってきました。現在、全国知事会は地域医療の混乱を理由に、医療提供体制の議論をコロナ収束後に先送りしたい意向を示しています。
都道府県別の1人当たりの医療費は、最大4割近くの差が出ています。千人当たりの病床数で全国最多の高知県は、1人当たりの医療費が66万5,294円と2位です。病床数は最少の神奈川県の3倍です。1人当たりの医療費は、人口当たりの病床数と関係が強く、供給が需要を作り出しています。コロナ禍であっても医療提供体制の見直しは必要です。
(2020年11月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)