新型コロナウイルスのワクチン開発を加速させるため、健康な若者を意図的にウイルスにさらしてワクチンの効果を調べる特殊な治験が、英国で年明けにも始まります。コロナ禍では初であり、後発組のワクチン候補から有望なものを絞り込むのに役立つと期待されています。治験はヒトチャレンジと呼ばれます。
まず、18~30歳の健康な若者をウイルスにさらし、感染に必要なウイルスの最低量を調べます。その後、別のグループの若者に初期段階で安全性が確認されているワクチン候補を投与し、ウイルスにさらした上で、感染を防げるかなどを調べます。参加者は高度に隔離された施設内で過ごし、医師や科学者らが24時間態勢で観察します。長所としては、通常の治験より早く結果が得られることや、地域の感染が収まった場合でも確かなデータが手に入ることを挙げられます。
ヒトチャレンジは、開発の中間段階にあるワクチンの中から、巨額の費用がかかる大規模な最終治験に進める有望なワクチンを絞り込むのに役立つと期待されています。参加者を若者に限定するのは、感染しても重症化するリスクが低いからですが、健康な人でも最悪の場合は死に至ることもあるため、倫理的な問題は避けられません。
治験にはリスクが伴いますが、参加希望者は多く、10月末時点で約170カ国4万人がボランティアに登録しています。日本からも約100人が登録しました。高学歴層が多く、平均年齢は30代半ばですが、80代の人もいます。
(2020年11月25日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)