不妊治療の保険適用への課題

政府は、不妊治療の助成制度拡充と、保険適用拡大への道筋を示しました。このことは、妊娠・出産を望みながら、不妊治療を経済的負担を理由に諦めざるを得なかった人たちにとって大きな福音です。最終報告では、不妊治療の保険適用を実施するまでの対応として、来年1月から現行の助成制度の所得制限を撤廃し、2回目以降の助成額も30万円に引き上げる拡充策を示しています。不育症の検査やがん治療に伴う不妊を支援する新たな取り組み、治療と仕事の両立に向けて必要な措置を講じることも盛り込んでいます。

(2020年12月15日 東京新聞)

助成拡充に並行して保険適用の準備を進めます。そのためには、学会が検討する体外受精や顕微授精の治療ガイドラインを2021年夏頃に完成させなければなりません。その後、保険適用を判断する中央社会保険医療協議会で議論し、2022年明けに保険適用を決めることになります。不妊治療では保険適用されていない未承認の薬を使うことが多く、保険外の医療と保険適用の医療を組み合わせると、全額自己負担となって患者負担が増えてしまうといった新たな課題が生じます。負担増を避けるため、保険外との組み合わせを例外的に認める手続きも進めなければなりません。いわゆる混合診療ですが、現行では認められていません。
多数の治療法がある体外受精や、さらに高度な顕微授精を、全て保険適用にするのは困難です。2022年4月からの保険適用は拙速と思われ、未承認の薬剤や、体外受精に使用する器材の認可承認までには時間を要します。2022年度以降も当面は助成制度を維持し、保険診療と自由診療扱いの治療法や医薬品の併用を認める混合診療の解禁をも視野に入れた慎重な検討が必要になります。保険適用によって、クライエントが受けたい先進医療が受けられなくなる事態に陥る恐れも出てきます。

(2020年12月15日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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