新型コロナウイルスの特徴は、症状が出ない人でも人にうつしてしまうことです。感染者の8割は、咳や発熱などの軽症にとどまります。自覚しにくい点が脅威で、国内で感染が初めて確認されてから1年で、30万人を超えて広がりました。一方で、高齢者や持病がある人を中心に全体の5%が重症化し、亡くなる危険性をはらんでいます。肺や腎臓などの疾患がる人、肥満の人はリスクが高いとされ、死亡率は高齢者ほど高く、80代以上では10%を超えるのに対し、50代では0.5%未満です。
ウイルスが喉や鼻でとどまれば、風邪のような症状で治まります。肺で増殖すると肺炎になり、酸素呼吸器や人工呼吸器が必要になることがあります。肺は傷つくと回復しにくくなります。治療の基本は、体がウイルスを排除するまで肺の機能を保つことです。肺の回復を保つため、人工呼吸器をつけた患者をうつ伏せの体位にする腹臥位療法も有効とされています。
新型コロナ感染症では、本来のウイルスを攻撃するはずの免疫が過剰に働くことも分かってきました。肺や心臓などの臓器が攻撃されて、機能が落ちることがあります。このため病状が進んだ患者には、免疫を調整するステロイド剤を用います。また、血管の詰まりの原因となる細かな血栓を防ぐ薬も使います。病態や治療法は徐々に明らかになり、医療現場で共有されています。
感染後に長引く体調不良、いわゆる後遺症も問題になっています。診察した医師によると、倦怠感や頭痛、体の痛みや息苦しさ、嗅覚や味覚の障害など様々な症状があるといい、職場や学校に行けないほどの人も少なくありません。
医療面では、重症化しやすい人をより早く見つける指標づくりが求められます。インフルエンザと比べて重症化率は10倍以上で、急速に病状が悪化することがあります。しかし、初期の頃と比べれば、患者の快復率はずっと良くなってきました。治療法が分かってきて、重症者を助ける体外式膜型人工肺(ECMO)を使う割合も減ったと言われています。
(2021年1月15日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)