新型コロナウイルスのワクチンは、日本で接種が始まった米ファイザー製ワクチンは、海外のデータでは発症リスクを20分の1に抑え、重い副反応も非常にまれと報告されています。しかし、ウイルスの遺伝情報を利用した新しいタイプであることもあり、開発期間が短いことを不安に思う人もいます。
感染拡大防止の切り札として注目されていますが、これまで日本ではワクチンの副反応が社会問題化したことが多く、接種への不安感には根強いものがあります。ワクチン接種の意向に関する国際調査では、日本は、ぜひ接種したい、やや接種したいを合わせて64%と、調査15か国のうち4番目に低率でした。接種を希望しない理由に、副反応への心配を挙げた人が66%に上り、調査国中で最多でした。日本人がワクチンに慎重な姿勢を示す背景には、国内で副反応が社会問題化し、訴訟が相次いだ歴史があります。
海外でも副反応による被害は起きていますが、日本人はとりわけリスクを嫌う傾向があります。しかし、ワクチンには、一定の頻度で副反応のリスクはありますが、接種のメリットが上回ることを理解することが大切です。新型コロナを早く落ち着いた状態にさせるためには、正確な情報を迅速に発信し、ワクチンに対する国民の信頼を得ていくことが必要です。
子宮頸がん予防のために接種したHPVワクチンにより、様々な副反応が出たとして、国は定期接種でありながら、積極的勧奨を中止しました。その後2013年には、国内製薬企業2社を相手に訴訟が起きています。HPVワクチン接種後の副反応には、因果関係の科学的なエビデンスはありませんが、接種による重篤なケースが起こる可能性は否定できません。副反応による疑いが否定できないケースには、迅速な救済が必要です。しかし接種に慎重な人々も、世界における数多くのエビデンスが蓄積されてきており、HPVワクチンの有用性を認識すべき時期が来ています。
(2021年2月27日 読売新聞)
(吉村 やすのり)