再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、高いコストが壁となる構図が改めて浮き彫りになってきています。経済産業省は、2030年度に再生エネの買い取り費用の総額が、最大で年4.9兆円と約6割増えると試算しています。電源の種類別に見ると、太陽光が発電量の9.3%と最も多く、水力の7.8%、風力の2.2%などとなっています。
再生エネルギーの比率が、2030年度に25%になったとしても、既に4割前後に及ぶ欧州各国に比べれば周回遅れの状況です。日本の再生エネルギーのコストが高いのは、国土の制約が大きいとされています。再生エネルギーの中で主力となっている太陽光は、日射量が大きくないため、日本では設備の利用率が15%程度と、2割近くに及ぶスペインなどと比べて低くなっています。
政府は、2050年の温暖化ガス排出実質ゼロに向けて、再生エネルギーの比率を50~60%に上げる目安を参考値として示しています。炭素税の一種である地球温暖化対策税の税率の引き上げも選択肢の一つです。わが国の炭素税率の低さも問題となっています。日本の税率は、排出量1tあたり289円と、数千円からそれ以上に及ぶ欧州諸国に比べて極めて低率です。
(2021年3月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)