昨年4月より始まった母体血による新型出生前検査は、十分な遺伝カウンセリング後に検査を受け、もしダウン症などの染色体異常の可能性があると判断された場合、羊水検査で確定診断することになっている。新型出生前検査は非確定検査であるため、陽性と判定されても染色体異常がない正常の場合がある。この検査は従来の検査と異なり、精度が高いため検査結果のみで中絶する恐れがあることが当初から懸念されていた。今回の2例は陽性と判定され、その後の確定診断を受けず、人工妊娠中絶したというケースである。
この検査を希望するクライエントのほとんどは、陽性であれば羊水検査を受け、染色体異常があった場合は多くの場合、中絶が選択される。1年間で7,775人が検査を受け、141人が陽性と判定されている。この中には、遺伝カウンセリングが実施されていたとしても、羊水検査を受けるとさらなる費用がかかるため、検査を受けずに中絶する今回のようなケースは、結構あるのではないだろうか?
(2014年6月11日 読売新聞)
(吉村 やすのり)