ワクチン証明書導入の是非

新型コロナウイルスのワクチン接種完了を証明するワクチン証明書導入の動きが、各国で広がっています。社会・経済活動の正常化に向けた取り組みの一つです。イスラエルでは、接種完了者にグリーンパスを発行します。グリーンパスがなければ、映画館や飲食店の利用、音楽イベント参加などは認められません。
欧州連合(EU)では、ワクチンパスポート発行のための関連法案が、加盟国に提示される見通しです。デジタル証明書の形式で、接種済みのワクチンの種類や検査結果などの情報を加盟国で共有します。域内渡航の際の隔離措置免除を想定し、将来的には域外からの入国者に対しても同様の措置を検討しています。
接種を受けられなかったり、望まなかったりする人もいる中、接種者に行動制限を免除する証明書の仕組みには、差別を助長するとの懸念もつきまといます。大量の個人データを扱う証明書には、流出や悪用の防止という課題もあります。さらに、ワクチンの有効性だけでなく、効果がどれだけ維持されるかという検証も不十分です。
わが国の新型コロナウイルスワクチン接種は、予防接種法に基づき、あくまで努力義務にとどまっています。アレルギーがあって接種できなかったり、副反応を恐れて接種を見合わせたりする人が一定程度います。接種証明がないことを理由に行動が制限されれば、そうした人たちへの差別につながりかねません。接種証明を持つ感染者が無症状のまま自由に動き回れば、大変なことになります。しかし、海外に渡航する日本人が相手国から接種証明を求められた場合は、市区町村に発行してもらう手はずになっています。

 

(2021年3月10日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。