感染力が高いとされる変異型の新型コロナウイルスの感染報告数が、国内で増えています。厚生労働省によると4月6日時点で1,038件に達し、前週の801件の約1.3倍となっています。最も多いのが、まん延防止等重点措置が適用されている大阪府の205件で、兵庫県の197件が続きます。埼玉県が61件、北海道が60件となるなど全国に拡大しています。
新型コロナウイルスの変異型は次々と見つかり、世界ですでに千以上に分岐しています。多くは自然に淘汰されますが、一部は感染力が強まったり、重症化しやすくなったりする恐れがあります。ウイルスは人に感染して増える際、遺伝子の複製ミスを起こします。新型コロナでは、平均約15日に1カ所の割合で変異ができるとされています。遺伝子が変わるとたんぱく質の一部が変化し、感染力や毒性などが変わる場合があります。
WHOが懸念すべき変異ウイルス(VOC)と定義しているのは、英国型、南ア型、ブラジル型です。ウイルスのたんぱく質に起きた変異の場所が示すのが、E484K、N501Yといった呼び方です。ブラジル型と南ア型は、E484KとN501Yの変異をともに持っていますが、英国型にE484Kはありません。
E484Kとは、ウイルスが人の細胞に感染する時に使うスパイクというたんぱく質に起きる変異で、484番目のアミノ酸がグルタミン酸(E)からリシン(K)に変わったことを示しています。この変異があると、免疫反応から逃れやすい性質を持つと考えられています。N501Yもこのたんぱく質に起きる変異で、感染力が高まる可能性が示されています。
(2021年4月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)