日本企業は、生涯現役時代を迎えてその備えを急いでいます。2021年4月の改正高年齢者雇用安定法の施行で、企業には従業員に70歳まで就業機会を確保する努力義務が課されました。将来的には罰則を伴う義務化も予想されます。現在日本企業の多くは60歳定年ですが、定年引き上げや再雇用期間の延長は避けられない状況です。
厚生労働省の2020年の調査によれば、65歳まで働ける制度を設けている企業の比率は99%に達しています。70歳以上が働ける制度を設けている企業は31%です。シニア雇用は嘱託などによる再雇用が中心で、給与水準は下がりますが、4割以上のシニアは定年後も定年前と全く同じ仕事をしています。
世界的に見て日本のシニアの働く意欲は高く、2018年時点の65歳以上の就業率は日本は24.3%で、主要国では韓国の31.3%に次いで高くなっています。欧米では年金支給開始とともにリタイアするシニアが多いのですが、日本のシニアは社会とのつながりを求めて働き続けることを選ぶ傾向が強くなっています。
日本は賃金の年功色が強く、解雇規制も厳格です。単に定年を延長・廃止すれば人件費は増えることになります。70歳まで働く人が増えた場合、65~69歳の従業員の人件費は、2040年時点で2019年比29%増の6.7兆円にも達します。十分な成果を出せないシニアを解雇する仕組みも必要になってきます。多くの企業は、双方の合意で契約を終える形を想定していますが、金銭補償などを伴うルールの策定が求められてきます。
(2021年4月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)