大企業の健康保険組合の赤字

新型コロナウイルスの感染拡大で、大企業の社員らが入る健康保険組合の財政が悪化しています。健康保険組合連合会の全国約1,400組合の2021年度の予算集計では、78%が赤字を見込んでいます。高齢化による支出増加の傾向は変わらず、収支は悪化しています。保険料収入は従業員の給与や賞与に連動します。コロナの影響により、賞与などが減少している宿泊・飲食、生活関連サービス・娯楽関連の企業で特に落ち込みが大きくなっています。
2021年度予算の経常赤字は5,098億円と、前年度に比べて赤字幅が約2,800億円も広がります。赤字組合の数は169増えて1,080にも達しています。コロナの感染拡大前の2019年度実績と比べると、赤字組合の割合は35%から78%まで倍増しています。収支悪化に拍車がかかれば、保険料率の引き上げや解散する健保組合の増加が懸念されます。
収支を均衡させるのに必要な保険料率を算定すると、10.06%と過去最高の料率になってしまいます。企業が自前の健保組合を持つ必要性を失わせることになりかねません。10%超となれば、企業が自前の健保組合を持つ必要性が失われてしまいます。解散を判断する目安が10%とされ、今後、解散を決める組合が増えるおそれが出てきます。
コロナ禍で感染者が拡大している中、わが国における死亡者数が少ないのは国民皆保険制度による医療水準の高さに起因しています。この制度を維持するためにも、健保組合を取り巻く財政状況の改善が望まれます。現役世代の保険料負担を軽減するため、年収200万円以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる法案が、今国会で審議中です。後期高齢者の所得基準の見直しなどさらなる改革が必要です。

(2021年4月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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