マスク着用の歴史

わが国は、古くからマスク文化を育んできています。1879年には英国由来のレスピラトールが東京などの都市で見かけられており、これがマスクの原型です。世界的には外科の手術室でマスクが用いられるようになったのは、1897年のドイツが最初であるとされています。
1899年に関西地区でペストが流行した際、「ペスト肺炎患者に近づく者は、何人に問われず、必ずレスピラトールまたは綿花をもって鼻および口を被覆しかつ、眼鏡を用うべし」と推奨されています。これがわが国におけるマスク着用の始まりと考えられています。
1918年から1920年に流行したインフルエンザであるスペイン風邪の際にも、マスク着用が感染対策として呼びかけられるスローガンが繰り返されました。マスクが日本に広く定着したのはこのスペイン風邪からです。
今回のコロナ禍でマスク着用は、世界の多くで義務化されるようになってきました。マスク文化の無かった欧米では、マスクをする人が出たことにより、街中で見る景色が劇的に変化してきています。いずれにしても、感染症に対するマスクの有用性は明らかであり、その意味でも日本はマスク先進国ともいえます。
最近になり、米国でもマスク着用の感染防止効果が認識されるようになってきています。アメリカ50州で、マスク着用の有無によりレストランを再開した場合の感染者数、死亡者数の比較が検討され、マスク着用により、感染者数は10分の1に減少しています。マスク着用の義務化をしてから、6週間後には新規感染者数は9割減、死亡者数は8割減と大きな効果がみられ、13州では5万人以上の過剰死の減少がみられています。感染者が多い地域や国では、飲食を提供する場でのマスクの義務化には感染防止効果がわかります。

(2021年4月5日 週刊医学界新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。