新型コロナウイルスの起源に関するWHOの報告書

新型コロナウイルスはどこからやってきたのでしょうか。WHOは、新型コロナウイルスが最初に流行した中国湖北省武漢市で、1~2月に実施した調査の報告書を公表しています。動物のウイルスが人に感染して広がった可能性が高いとしていますが、決定的な証拠をつかむことはできていません。新型コロナのような新しい病原体による感染症を新興感染症と呼びます。病原体の特定に加え、その病原体の起源を調べることは重要です。
報告書は起源について、①動物のウイルスが中間宿主を経由して人に感染、②動物のウイルスが人に直接感染、③冷凍食品による外部からの持ち込み、④研究所から流出という4つの仮説を検証しています。新興感染症の約4分の3は野生動物や家畜に由来します。新型コロナでも当初から、動物が関わる2つの仮説の可能性が他の2つより高いとみなされていました。
日米英韓など14カ国の政府は、調査は大幅に遅れ、完全な情報へのアクセスも欠いているとの声明を発表しています。国際合同チームも報告書で、今後の調査で動物の種類や地域を広げることなどを提案しています。動物の調査には、非常に労力と時間がかかります。新興感染症の感染源の調査は容易ではなく、政治性を排した科学的な調査には、中国と国際社会の協力が欠かせません。

(2021年4月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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