オンライン診療態勢の遅れ

政府は、昨年4月にコロナの院内感染のリスクを下げるため、オンライン診療を特例的に解禁しました。コロナ前は、初診からの利用は認めず、対象範囲も高血圧や糖尿病など計画的に治療する慢性疾患に制限していました。感染が収束するまでの間は制約を取り払い、コロナ疑いも含めて発熱や頭痛といった急性期の症状でも受診できるようにしました。
しかし、遠隔診療に対応する医療機関は未だ少数派です。厚生労働省によれば、電話も含めた遠隔診療を実施する医療機関は、全体の15%の約1万6,000施設、初診から対応するのは、6%の約7,000施設に過ぎません。初診利用は、解禁直後の昨年5月の約1万件がピークで、その後は月5千~7千件台で推移しています。大半が電話による受診で、オンライン初診が右肩上がりで増えている状況ではありません。自宅や宿泊施設で療養するコロナ患者へのオンライン診療も広がっていません。
専用のシステム導入などに費用がかかるのに、診療報酬は対面よりも低く設定されています。患者は便利でも、同じ診療行為を低く評価される不満は根強いものがあります。画面越しで得られる患者の情報も限られ、病気を見逃すリスクを気にする医師もいます。

(2021年5月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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