コロナ禍で、小児科などで病気の子どもを一時的に預かる病児保育事業の利用が急減しています。在宅勤務の推奨やコロナ以外の感染症の減少で、利用が低迷しています。コロナへの感染を警戒して利用を敬遠する動きもあり、施設の運営者は存続の危機を訴えています。
病児保育には、①病院併設、②保育所併設、③単独などがあります。厚生労働省によれば、共働き世帯の増加で利用者は増え続け、2019年度の延べ利用者は、過去最多の108万人に達しました。事業者も同年度は全国3,374カ所と7年前の2倍以上に増えました。
病児保育はコロナ前から赤字体質で、2018年度には、全国の66%の事業者が赤字です。病児保育は国と都道府県、市区町村が3分の1ずつを担う補助金と利用料収入で運営されています。赤字の最大の要因は人件費です。コロナ禍で、昨年4月の利用者は前年同月比67%減、5月は同85%減とコロナが追い打ちをかけています。
しかし、コロナ禍での利用減は一時的なもので、働く女性の増加で病児保育のニーズは今後も増えると思われます。核家族が進み、児童虐待も問題になる中、親がゆとりを持って子育てをするためのセーフティーネットとしても、病児保育が必要です。将来的には、親が子育ての休息をするレスパイトケアや、病院に併設した施設での医療的ケア児の一時受け入れなど、幅広い役割を担うことが期待されます。
(2021年5月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)