がんゲノム医療の現状

ヒトのゲノム(全遺伝情報)には2万~3万種類の遺伝子があり、喫煙や加齢などで変異します。細胞はそれを修復する機能も備えていますが、がん化することもあります。がんを誘発する遺伝子が活性化したり、がん抑制遺伝子が働かなかったりして、がん細胞が無秩序に増殖し始めます。
がん細胞の遺伝子変異を調べて、効果が見込める薬を探すがんゲノム医療が広がっています。標準治療で効果がなかった患者に対して、2019年に多数の遺伝子を一度に調べるがん遺伝子パネル検査が、公的医療保険で認められました。しかし、実際に治療に入れるケースが少ないなど限界があります。
がんゲノム医療は、専門家がそろう中核拠点病院(12施設)や拠点病院(33施設)、それらと連携して治療にあたる連携病院(180施設)で受けられます。手術時などに採取されたがん組織を検査会社に送ると、次世代シーケンサーと呼ばれる装置で解析し、変異のある遺伝子や、対応する分子標的薬を探します。
厚生労働省によれば、2019年9月~2020年8月に検査を受けた186病院計7,467人のうち、治療に結びついたのは607人(8.1%)でした。薬が見つかっても、国内未承認で入手できないなどの事情で治療を断念することもあります。がんゲノム医療は、現状ではまだ発展途上だと理解する必要があります。

(2021年5月23日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。